2010/10/15

今年のノーベル化学賞

今年のノーベル化学賞

 さてそろそろ空気もひんやりして過ごしやすく仕事がはかどるように(?汗)なってきましたね。・・・犬です。

 今年もノーベル賞が発表されてきました。わたしは化学に少なからず関わりがあるので、化学賞には毎年注目していました。今年の発表を見て驚きましたよ。なんとHeck先生が受賞なされているんだもの!

 このノーベル化学賞の候補者を決めるのには履歴が重要と、まことしやかに言われています。
 履歴というのは二つありまして、一つは順番。要するに先にノーベル化学賞を受賞した内容の、更に「基礎」になる研究には受賞されないって事です。今回のノーベル賞は炭素ー炭素結合を形成するクロスカップリング反応に関しての受賞ですから、その基礎となる錯体化学に関する受賞はもう無いよ、ってことです。
 二つ目は、分野。ある分野で受賞された場合には、しばらく、おそらく10年位でしょうけど、その分野に対しては受賞されないってことです。つまり、白川先生が受賞された以上、π共役高分子に関する受賞はしばらく無いでしょうし、野依先生が受賞されたので、光学活性なカップリング反応はもう無いでしょう、ってことです。
 で、驚いたのが、今回クロスカップリングに関する受賞ですよ。野依先生の受賞内容より、歴史的順番としては今回のカップリング反応の方が先発の研究じゃないですか。ですから、野依先生が受賞されたとき、ああ、これはクロスカップリング反応での受賞はもうないな、と思ったわけですよ。
 それからHeck先生は極めてマイナーな雑誌にばかり投稿していて、米国化学会誌への投稿なんて数えるほどしかない。要するに時代の潮流や、政治力とは関係ないところで、重要な研究をコツコツ積み上げてるんですよ。ノーベル賞って日本人はむやみに持ち上げる所があるけれど、かなり政治的な賞でしたからねw 政治力の無い先生なんて受賞されるわけがない、はずだったわけですよ。それが今回受賞に至った。これはノーベル財団が(当初の設立趣旨通りに)正常に機能しているってことで本当に喜ばしいことです。

 これでHartwig先生やらBuchbald先生らの、パラジウム触媒がらみの研究者にはノーベル賞はまず来なくなった訳ですから歯がゆいでしょうな。

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